2016年3月5日土曜日

平河町ミュージックス第37回 藤田容子、小林秀子、カティ・ライティネンによるゴールドベルク変奏曲 を聴いた

公演前日と、当日の公演前
藤田容子がヴァイオリンを、小林秀子がヴィオラを、そしてカティ・ライティネンがチェロを携え、三人三様のヨーロッパの香りと共に平河町に舞い降りた。

開演
絃に弓が触れた。
昨年夏に作曲家が訪れた八ヶ岳の自然の様子を音に置き換えた新曲。
聴衆の前で、はじめて藤田のヴァイオリンが優美な響きに変える。
ラファエル・タナー作曲:八ヶ岳(新作初演) 

藤田と30年余の親交のある小林が、
ヴィオラとともに舞台に現れた。
ずっしりとした奥深い響きで、
病身の作曲家ヴュータンが遺作に込めた悲壮感をあらわす。
アンリ・ヴュータン作曲:カプリッチョ

穏やかなチェロを穏やかなカティがあやつり、
ときおり そのチェロを打ち鳴らしながら、
狂おしいほどの響きをはじき出す。
圧巻だ!
藤倉大作曲:エターナル・エスケープ
 
休憩のあと

一時間ほどのバッハの大作に向き合う。
艶やかなヴァイオリンに
安定感のあるヴィオラが重なり、
底流にチェロの響きが流れる。
北欧の椅子に深々と身を沈めながらも、
聴衆は、次々と移ろう三人の動きと三つの響きを
固唾を飲んで 見つめ 聴いた。
なんども鳥肌が立った。
JS・バッハ作曲:ゴールドベルク変奏曲
ドミトリー・シトコヴェツキーによる弦楽三重奏版


輝かしい経歴を経てスイスを拠点にグローバルな活躍を続ける藤田は、
旧知の小林とカティを紹介するために来日した。
三人での演奏は今回が初めてという。

国際的ヴィオラ奏者として知られる小林は、
ドイツを拠点に活躍し、マンハイム音楽大学教授として、
後進の指導にもあたっている。

フィンランド生まれのカティは、
スウェーデン王立歌劇場管弦楽団首席奏者をはじめ、
国際的な演奏活動をおこなっている。

生まれも育ちも異なる、しかし それぞれ破格の才能が
響きを持ち寄り、それらを重ねて 極上の音楽 が生みだされた。
その場所に居合わせ、響きに身をゆだねた 至福のひととき であった。




平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近