2014年11月15日土曜日

平河町ミュージックス第29回 西江辰郎&上森祥平 デュオの夕べ を聴いた

公演当日の昼下がり
西江辰郎がヴァイオリンを、
上森祥平がチェロを携えて、会場に現れた。
開場直前まで、
お互いの音色を丹念に確かめ合っていた。






開演
バッハの旋律が空間を一気に支配する。
書ける音をすべて書き込んだと言われるバッハを
全曲演奏することがある上森は、
その音楽には多様性の豊かさと、
その中から立ち昇る「理」の力が見えると語っている。
ヨハン・セバスティアン・バッハ/2声のインヴェンションより




バッハに対して、
モーツァルトはシンプルな音だけで、
あらゆる事象や心理を表現し、
それらすべてが無垢な輝きを放つと言う。
穏やかに流れるようなモーツァルトの音色に
聴衆の体がかすかに揺れる。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/
ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 変ロ長調K.424
(ヴァイオリンとチェロ版)



静けさを打ち破るように激しい旋律が、2台の絃から弾き出される。
2台の絃のあいだを響きが勢いよく駆け巡るようだ。
数少ないヴァイオリンとチェロのための楽曲の中から、
西江が、ある大学図書館でようやく見つけた楽譜が、
聴衆の目前で、緊迫感にみちた響きに変えられていく。
アレクサンドル・チェレプニン/ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲OP.49
休憩のあと、
ドラマチックな響きが白い空間を満たす。
日本と同じ五音音階を含むハンガリー音楽や、
日本の民謡の影響が根底にあると言われる旋律は、
聴衆の耳に迫力と親しみをともない迫ってくる。
ゾルターン・コダーイ/ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲OP.7



大きな拍手が鳴り止まない。
アンコール。
西江が、上森にバッハのチェロ曲をもとめ、
舞台の脇に身を隠した。





舞台上に残された上森。
そして
バッハの無伴奏チェロ曲が流れる。

美しい。






鳴り止まない拍手の中で、
二人で2曲目のアンコール曲を弾き、
弓を置いた。








渾身の大曲を弾き終えた二人が見せた
この笑顔









それぞれ、日本を代表する演奏者である西江と上森。
傍にいると、
包み込むような穏やかな人柄と、
音楽に対する真摯な姿勢、
そして、何よりも若さが放つ勢いが心地よい。
個性的なプログラムが、ふたつの絃の響きによって
さらに輝きを増した・・・そんな稀有な デュオの夕べ であった。







平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ  木村佐近

0 件のコメント:

コメントを投稿