2014年4月26日土曜日

平河町ミュージックス第26回 加藤訓子 CANTUS を聴いた

公演前日と当日の午後
加藤訓子が、マリンバと
加藤自身があらかじめ演奏録音した音源との
響きを合わせていた。


開演
マレットが鍵盤に触れた瞬間から、
一気にバッハの世界に引き込まれる。
バッハ平均律クラヴィーア曲第一番ハ長調BWV846より-前奏曲

マリンバ6台のためにスティーブ・ライヒが作曲したアンサンブル曲を、
加藤が録音音源にライブソロをかさねるようにアレンジした作品。
鍵盤からはじき出される音の粒々がつながり、流れるような旋律になる。
シックスマリンバ・カウンターポイント/ スティーブ・ライヒ作曲/加藤訓子編曲

ふたたびバッハの響きが空間を満たす。
バッハ無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007より前奏曲

小気味の良い短音の連打のなかに、やがて美しいメロディーが加わる。
さらに、パートごとにマレットが持ちかえられ、音の色が移ろいでいく。
加藤の踊るような、しなやかな動きのなかから打ち出される一打一打が正確に音を刻む。
ニューヨーク・カウンターポイント/ スティーブ・ライヒ作曲/加藤訓子編曲

おだやかな語り口で、
スティーブ・ライヒとアルヴォ・ペルトの音楽について語る。

静寂を破るかのように、鐘の音が曲の始まりを告げる。
鍵盤の表裏を2本のマレットで挟み、
上下に震えるように打ち鳴らされた重厚な響きが幾重にも重ねられ、
まるでオルガンのような荘厳さを放つ。
鳥肌が立った。
カントゥス・ベンジャミンブリテンの思い出に/ アルヴォ・ペルト作曲/加藤訓子編曲

マリンバの柔らかな響きが空間を支配した。
空気に重さを感じるような、コラール。
パールグラウンド/ ハイウェル・ディヴィス作曲
 
加藤は、アルヴォ・ペルトの作品について、
「現代の作曲家の作品の中でも究極にシンプルで美しく、
哀しくまた優しい荘厳な音の世界をもつ」と述べている。
その中でも最も美しい曲に聴衆が酔う。
鏡の中の鏡/ アルヴォ・ペルト作曲/加藤訓子編曲

アンコールにこたえて、バッハのコラールを演奏したあと、
マレットを静かに置いた。
マリンバの響きに電気音響がどのように絡み合うのか
その響きのなかに身を置くまでは想像し得なかったが、
響きの坩堝の中は、とても自然で心地よく、
あたらしいアコースティックの世界を垣間見たような感動を覚えた。

加藤が綴った当日の演奏プログラムからは、
その明晰な文面だけでなく、行間から、音楽に対する真摯な姿勢が滲み出ている。
輝かしい経歴と、卓越した才能にあふれ、パーカッショニストとして世界的な評価を受けながら、
あたらしい音楽の創造に余念のない加藤の笑顔の向こうに、
うねるような響きの余韻が重なった。




平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近











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