2013年7月6日土曜日

平河町ミュージックス第21回 通崎 睦美 「モッキンソロとリコーダーとのデュオ」 を聴いた


公演当日の昼下がり
リハーサルは木琴の組立てからはじまった。
戦前、米国で活躍した木琴奏者「平岡養一」がつかい、
通崎睦美に引き継がれた木琴は、
往時のままの響きと共に、6つのトランクに収められていた。

開演
マレットが木琴に触れ、
木を叩く清らかな響きが
つぎつぎと、空間にひろがる。
イギリスのナイチンゲール~「笛の楽園」より/Jファン・エイク
相馬流れ山/相馬地方民謡・野田雅巳編
ちんさぐぬ花/沖縄民謡・港大尋編
砂に消えた涙/P.ソフィッチ・当摩泰久編

通崎が大きさのちがう2本のマレットを持ち、木琴と向き合った。
左右の微妙な音の違いが、軽妙なリズムを刻む。
時には左右のマレットを持ちかえ聴衆の耳と目を釘付けにする。
演奏が終わると同時に作曲者鷹羽弘晃が満面の笑みで駆け寄った。
木霊~独奏木琴のための(新作初演)/鷹羽弘晃

小沼純一が通崎に語りかけた。
戦前、米国にあった平岡養一の楽器が今ここにあることや、
そもそもマリンバ奏者であった通崎が木琴を演奏することになったわけなど。
目の前に並ぶ古びたトランクと木琴の物語に、聴衆が聞き入った。

かつて米国のラジオで、
毎朝平岡養一の生演奏が流れていたという。
そのときの木琴から、そのときとおなじ響きを
通崎が叩きだす。
ソナタ~独奏木琴のための より/T.B.ピットフィールド

休憩の後
本村睦幸が数本のリコーダーを携えて加わる。
木管を通り抜けた美しい響きが、
木を叩く音に重なり合い、
響きがいっそう華やかになっていく。
かるわざ師/JCノード

通崎と本村にふたたび小沼が問いかける。
マリンバと木琴の違いやリコーダーの特徴など。
そして木琴とリコーダーのための作品の演奏に移る。
発明家より/野田雅巳

二人のデュオのために通崎と本村が当摩泰久に
作曲を委嘱した曲。
当日のリハーサルにも立ち会った当摩は、
二人の紡ぎだす響きを客席でたしかめていた。
斜面のクーラント/当摩泰久

本村が語る。
木琴とリコーダーのデュオにあう曲は稀で、
数ある楽曲から二人が試行錯誤で選び出した旋律を
並べたと。
バロック・アソートメント
/G.P.テレマン、R.ヴァレンタイン、ゲントのルイエ、G.F.ヘンデルのソナタから

聴衆の拍手に応えて、
二つのアンコール曲を奏でた後、
余韻をともないながら、幕を閉じた。

モッキンとリコーダーと聞いたとき、
木琴のバッグを片手に、
リコーダーをランドセルに差して通った小学校の
音楽の授業で鳴らした素朴な音を想い出した。
その音とは天と地ほどのちがいはあるものの、
きょう、二人の響きの前に、
そんな幼い日の記憶がよみがえり重なった。
通崎のモッキンが叩きだす清らかで変幻自在な響きと
本村のリコーダーの澄んだ響きが織りなす美しい旋律は、
このひとときを支配し、
多くの聴衆の幼い記憶まで呼び起こしたかも知れない。




平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近