2010年12月11日土曜日

平河町ミュージックス第六回公演 戸島さや野 ヴァイオリン・ソロ モノクロームのなかに無数の色を を聴いた

「この位置が、音が隅々までいきわたる感覚がした。」
そう言いながら、
前日のリハーサルで、
戸島さや野は白い空間の中の
入口の隅で演奏することを選んだ。
公演当日、
戸島は夕暮れの光の中で、響きを確かめていた。


公演のはじまり
テレマン:「12のファンタジアより第7番」
白い空間の片隅から
ひとつのヴァイオリンが聴衆に向き合う。





戸島美喜夫:ソナタ「三つの声」の演奏に先立ち、
作曲家戸島美喜夫が小沼純一に語りかける。
もともとヴィオラのためにつくった作品を、
この日のために、
ヴァイオリン用に手を加えた時のことを。




〈遠くからの〉
〈南の島からの〉
〈まわる風の〉
3つの、抽象的でありながら、
つややかな旋律を弾き分ける。




フェルドマン:「アーロン・コープランドのために」
中二階から、短く、音の少ない、弱音が降りてくる。
聴衆は、中空を見つめ、あるいは目を閉じながら、
絃と弓から放たれる音のひとつひとつに聴き入る。



そして、バルトーク:「無伴奏ヴァイオリンソナタ」
スケールの大きな名曲であり難曲でもある作品を
たったひとりで弾く。
若く力強い才能が、難曲を弾きこなし、
親密な空間で、
聴衆を呑みこんでいく。


バルトークを弾き終え、
小沼と語る戸島の表情に、
おおきな曲を弾き終えた安堵感が漂う。





アンコールは、
バッハのヴァイオリンソナタから

渾身の演奏が静かに終わった。





虹をつくる色の平行線の一部に白い色をのせることで、
様々な色の文字が浮き上がる今回のポスター。
絃の上におく弓のあり方で、
無数の音が出るさまを表している。
そしてそこには、私達の期待も込められた。
戸島が、これからも
たったひとつのヴァイオリンから、
無数の色を紡ぎだしてくれることを。


平河町ミュージックス実行委員会 ワーキンググループ   木村佐近

0 件のコメント:

コメントを投稿